「ちょっといいもの」の難しい時代
「ちょっといいもの」の立ち位置がなくなりつつあるのかな。
大手が提供する、品質ぎりぎり妥協の範囲だけど安くて安定供給されるもの。高級品市場向けの、高くて高品位なもの。その2つの間に入る「ちょっといいもの」がどんどん減っているように感じます。
身近なところでは、大手チェーンのレストランやファーストフードと高級レストランの間に入る町の食事処。日々利用するにはちょっと苦しい、ちょっといい食事処、といった感じ。車だと、軽自動車やフィットとレジェンドの間に入る、5ナンバー枠いっぱい前後くらいサイズのスペシャリティ。
こういう経済ご時世だから、仕方ないと思うんですけどね。みんなで上り坂を登り続けることができた時代が終わり、それぞれに応じた位置に落ち着かざるを得ない。落ち着き場所が上から下まで幅広い割には人数が多くなく、供給を絞って分けざるを得ない。そういうこと?など考えます。
「ちょっといいもの」を提供するのは、たいていが大資本でない小規模ビジネス。だから世に広く認知されず、今の経済ご時世だと維持していけるほど客の数がつかない。
「ちょっといい」は本当にちょっとで、これなら安い方がいいやと思える程度であることも多くあって、やっぱり今の経済ご時世だと維持していけるほどの客数がつかない。多くの人が、バブル時代に「いいもの」のレベルをかいま見てしまいましたしね。そこに届かないなら安い方がいい、と。
そんな中で、老舗と呼ばれるほど世に広く認知されていて、「ちょっといいもの」を提供し続けてきたところには期待しています。
なのですが、子どもの頃から利用してきた庶民派の有名とんかつ店。パン粉のつけ置きをするようになってしまって久しく・・・ お得な定食用のものだけでなく、単品までつけ置きになってしまって・・・
客の数が一段と減ったように感じます。
経済ご時世だけが理由じゃありません。年齢の高い客が減ったと感じますもの。そりゃそうでしょう。自分だって足が遠のいていますもの。
廃業に至るほど減っているわけではないんですけどね。美味しい情報由来の新規客だって、「有名=美味しいプラシーボ」客だって、無意識のうちに「これなら安い方が・・・」と感じている可能性がありますよ。年配のなじみ客が減っただけでとどまるかどうか。
うっかりすると、うっかりが重なると、こうやってまた一つ消えていくのかもしれません。
ここがダメなままだと困る。まして無くなったら困る。
強くそう思うので、意を決して、店の人に話しました。パン粉のつけ置きをするようになってからだいぶ落ちちゃっているよ、と。
お店の人も、聞いた瞬間に強く反応するくらい、気にしていたようです。嬉しくなりました。気にしていたんだ、と。つけ置きコストダウンが仮に店主の方針だとして、フロアの要に見えるお姉さんは反対らしい、と。ならば元に戻る可能性がゼロではないな、と。
でも、人件費なんでしょうね。あの手のお店は、そこそこ高給でなければしっかりした若い働き手がつかないでしょう。まして店の立役者的な働き盛りにおいておや。
井泉には、なんとか復活してもらいたい。今は亡きおやじが、昭和一桁生まれの安月給働き蜂で小遣い少なかったおやじが、はな垂れ小僧の自分をたまに連れて行ってくれた「とっておき」のお店です。困難は理解できるけど、なんとか!
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